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仲俣暁生さんの『1Q84』擁護はちょっと異様だと思う [雑記]

続きあり

仲俣暁生さんがこんな事を書いている。
http://d.hatena.ne.jp/solar/20090730#p1

私は仲俣さんのブログが好きで、RSSに登録して読んでいるくらいなのだが、このところの『1Q84』擁護はちょっと異様に思える。

東京新聞の今月の文芸時評で、沼野充義が村上春樹の『1Q84』を次のように批判している。 ≪不当な暴力をふるったひどい人間は復讐のために殺されてもいいのだ、それは「正しい」ことなのだという危険な論理は、何度も村上春樹の『1Q84』で繰り返されていて、私にはなんだか、「ヘヴン」は『1Q84』が避けて通っている問題に対して、文学が与え得る最高の回答例になっているのではないかとも思えた。≫ こういう読解をしている人は多いのかもしれないが、村上春樹の本意からはかなりズレた読みだと思う。「ヘヴン」は『群像』に掲載された川上未映子の長篇のことで、私はまだこの小説を読んでいないが、真正面から村上春樹の作品を論じるのではなく、川上未映子の新作を誉めるためのダシに持ち出すあたり、時評としてあまりに軽薄としか思えない。こんなふうに誉められても、川上未映子は困るだけだろう。 『1Q84』の青豆は魅力的なキャラクターだが、だからこそ、彼女が行うテロリズムにはたして「正義」はあるのかどうかという問いが、読者には繰り返し投げかけられている。そのあたりは丁寧に読めば絶対に誤読するはずはないのだが、沼野さん一体どうしてしまったのだろうか。売れた本の悪口を言うのが批評家だと思っているのだとしたら大間違いである。 このところいろんな『1Q84』便乗本が出始めたけれど、沼野氏のような「誤読」に基づく『1Q84』批判は案外多いのではないか。でも沼野氏が恣意的に「文学」という言葉を持ち出しているのとは対象的に、村上春樹はどうすれば「文学」という言葉や概念に頼らずに、現代の難問に答えることができるか、ということを実作によって試しているのだと私は思う。だからこそ、天吾は「ゴーストライター」として振る舞うのだし、作中の『空気さなぎ』と同様、『1Q84』は「ベストセラー」にならざるをえないのである。


「村上春樹の本意からはかなりズレた読みだ」
「そのあたりは丁寧に読めば絶対に誤読するはずはない」
「売れた本の悪口を言うのが批評家だと思っているのだとしたら大間違いである」
「沼野氏のような「誤読」に基づく『1Q84』批判は案外多いのではないか」

とまあ、言いたい放題なのである。

私には仲俣さんの文章が、ようするに「俺はわかってる。おまえはわかってない」と言いたいだけのように思える。
別に異議を唱えるのはいいのだが、勝手に作者の「本意」を持ち出して他人の読みを「誤読」と決めつけるのはどうなんだろう。

そのうえ「売れた本の悪口を言うのが批評家だと思っている」とかまさしく下衆の勘繰り以外の何ものでもない。

私は別に沼野氏が正しいと言いたいわけではない。
というか、そんなことどうでもいい。

私が言いたいのはただ一つ。

仲俣さん一体どうしてしまったのだろうか。

ということだけである。

こんな短絡的でヒステリックな噛みつき方するような人じゃなかったような気がするんだけどなあ…

まあ、残念だな、ということです。


≪追記≫

沼野氏は7/7発売の『文學界』八月号に、すでに『1Q84』論を書いているのに気づいた。
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/
仲俣さんはどうしてこっちを論じないのだろうか。



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コメント 2

aosima0714

初めまして!
遊びに来ました!
良かったら私のブログに来てくださいね!
これから、ちょこちょこ遊びにきます!よろしくです<m(__)m>
by aosima0714 (2009-07-30 15:20) 

まぐっぺ

>こんな短絡的でヒステリックな噛みつき方するような人じゃなかったような気がするんだけどなあ…

いや、いつもその(感情的で居丈高な)パターン、しかもブログのアクセス向上のため意図的にやってる気が…。
by まぐっぺ (2009-07-30 16:49) 

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