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ヱヴァンゲリヲン新劇場版はトゥルーエンドの夢を見るか [アニメ]

ようやく、気になる方々の感想を見ることができる。
皆、選りすぐりのエヴァの語り部だと思う。

まずは東浩紀さん
http://d.hatena.ne.jp/hazuma/20090706

予想以上によかった⇒正直個人的にはノレない⇒批評家としては評価する、
といった感じでしょうか。

印象に残ったのは次の部分です。

ただひとつだけ言えば、それは結局、ぼくがこの新エヴァに、映像密度への驚嘆や批評的再構成への感嘆と反比例するかのように、「アツさ」や「ヤバさ」をまったく感じ取れなかった、ということを意味するのだと思います。これはぼくのきわめて個人的な感想ですが、とにかくそうなのです。

エヴァンゲリオンの物語は、普通に見て単に荒唐無稽な、あえて言えば幼稚な物語です。SF設定の妙がどうとか、政治的寓意がどうとか、メッセージの深さがどうとかいうものではありません。それでも多くのひとがそんな荒唐無稽な物語に吸い込まれたのは、煎じ詰めればシンジとレイとアスカのあの妙にテンパッた台詞や行動のゆえだったのだと思います。だから、その「イタさ」がうまく物語のなかに回収されてしまうと、作品からなにか欲望の核みたいなものが抜け落ちてしまう。ぼくはそう感じたのでした。


ああ、さすがだ。なんて的確で美しい。
くそ、やっぱ凄いなあ。

“その「イタさ」がうまく物語のなかに回収されてしまうと、作品からなにか欲望の核みたいなものが抜け落ちてしまう”

そう、そうなの!

あの「イタさ」こそ、エヴァだった。

そしてそれを「幼稚さ」として対象化できるような視点が陳腐な捏造でしかなく、
「イタい」存在のまま生き続けなければならない、
足を下ろす大地が存在することを一歩ごとに確かめながら進まざるを得ない、
そういうリアリティを、リアリズムに汚染された「文学」には不可能なやり方で形象化させて見せたのがエヴァだった。

そうであるなら、この新しいエヴァはエヴァではない。

正直、私もそう思う。
が、同時にちょっと違うことも考えている。

というのは、東さんは新旧のエヴァを別個の作品として考えている(と思う)。
当然といえば当然だ。
リメイクというのは、設定は共有していても、相互に内的には関連しないものだ。
当然切り離して考えるからこそ、両者を比べて論じることもできる。
実際、私もそうしている。

しかし、もうひとつの見方もできると思うのだ。

それはちょっとおいといて、次は“綾波原理主義者”の大泉実成さん。
http://d.hatena.ne.jp/oizumi-m/20090707

ああ、実にチャーミングだなあ。こういう文章が書きたいなあ。

いや、それはおいといて、私の目をガッツリ捉えたのはここだ。
「綾波をあんなに幸せにしてはいかん、あんなの俺の綾波じゃない」


な、なんてことを言うんですか、大泉さん!
綾波が幸せになって何が悪い!

シンジへの思いを自覚した次の瞬間に自ら爆死した綾波。
無残としか言いようのない最期にどれほどの喪失感を感じたか。
無事生還したと思ったら自分は三人目だとか言い出した綾波。
その感じた、内臓が千切られるようなやるせなさ。

綾波は幸せになれるのだ。絶対にそうなのだ。何か文句あるかー!

と、明らかに見当違いの感情噴火をしていて気づいたのだ。

あれ?これって「ひぐらし感覚」でね?

大泉さんの言葉に触発されて、私は新エヴァに「祭囃子編」を求め始めていたのだ。
(「ひぐらしのなく頃に」を未プレイの方すみません。ネタばれもあります)

「目明し編」のラストのあまりの悲痛さに、私は思わずこう叫んでおりました。

「もう何でもいいから、こいつらを幸せにしてやってくれ!!!」

まったく見事に竜騎士の思惑通りというか。。。
そして「祭囃子編」において、掻き立てた欲望を(これ見よがしの悪意をもって)満たしてくれたのです。

(そういう意味では新キャラ導入は、羽生か?彼女が「奇跡」への鍵になるのか?)

何が言いたいかというと、新劇場版は旧版のリメイクと言うより、
いかにトゥルーエンドにたどり着くかという、旧版を包み込んだ世界構成としても読めるのではないか、と。

思えば、多世界への想像力を開放したのはエヴァだった。

綾波における人格の複数性。
メタ的視点を取り込んだ最終2話。
本編の内部で描かれた「学園エヴァ」。
最終2話を置換するものとして差し出された映画。

そして今回の新劇場版でも、すべてを一新することはせず、
あえて、旧作を参照させる画を多用している。
何が同じで何が違うのか?
観客の記憶を刺激して、重ね合わせた画像のブレで新たな可能性への欲望を刺激する。

竹熊健太郎さんは
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-486f.html#more

『旧エヴァ』は山手線で東京から渋谷方向に走っているが、今度の『ヱヴァ』は京浜東北線で、品川駅を通過して横浜方向に走っていることがはっきり理解できました。

と書いておられますが、新旧の「出発点は同じなのに別の場所につく」ことが重要なわけです。

そうすると、両者を独立したものとして比較する必要はなくなる。

まあ到着地は「祭囃子編」ではなく、「罪滅し編」や「皆殺し編」、下手すると「賽殺し編」かもしれないが。

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